A型肝炎
RNAウイルスであるA型肝炎ウイルス(hepatis A virus : HAV)による急性感染症です。感染者の糞便中に排泄されたHAVやHAVに汚染された食品や飲料水を経口摂取することで感染します。潜伏期は2〜4週間(平均4週間)で、38℃以上の発熱、全身倦怠感、食食不振が初発症状で、その後、黄疸・肝機能検査異常等の肝炎に特徴的な症状が出現します。A型肝炎に特異的な治療法は存在せず、安静や捕液等の治療を行います。通常は約2〜3ヶ月の経過で治癒し、一般的は予後良好な疾患で慢性化することはありませんが、まれに劇症化や死亡例の報告もあります。小児では症状が出ない不顕性感染が多く、5歳以下の小児では約70〜90%が不顕性感染と言われています。不顕性感染でも感染源となり、家族内感染の原因になります。近年は100〜400人程度のA型肝炎患者および不顕性感染患者の報告があり、5年間で6例の劇症肝炎が報告されています。
感染の推定原因食ではカキやその他の魚介類が多く報告されていますが、感染源不明の場合も多いとされています。また、衛生環境が不整備な国への渡航も感染には注意すべきとされ、北米、西欧、北欧、オーストラリア、ニュージランド以外は感染に注意すべき地域とされています。
B型肝炎
DNAウイルスであるB型肝炎ウイルス(hepatis B virus : HBV)による感染症で感染した時の年齢や健康状態、ウイルスの遺伝子型(ジェノタイプ)によって一過性感染と持続感染に別れます。日本では従来ジェノタイプBとジェノタイプCがほとんどであしたが、近年はジェノタイプAが50%を超える様になってきています。ジェノタイプAは欧米やアフリカで多い型とされています。ジェノタイプBとジェノタイプCでは、乳幼児期に感染すれば高率に持続感染となり、成人においては消耗性疾患や免疫不全状態でなければ持続感染になることは稀とされてきました、しかし、ジェノタイプAでは成人で感染しても約10%は一過性感染で終わらず持続感染に移行すると報告されています。B型急性肝炎の経過は、1〜6ヶ月の潜伏期間後に全身倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐、黄疸を発症します。劇症化に至らない場合は、数週間で肝炎は極期を過ぎ回復に向かいます。0.4%〜1%が劇症化すると報告されています。
HBVの主として感染者の血液や唾液、精液などを介して感染します。日本においては1972年から輸血・血液製剤用血液のB型肝炎スクリーニングが開始され、輸血による感染が激減しました。また1986年からB型肝炎母子感染防止事業が実施され、お産の時の母親から赤ちゃんへの母子感染が減少しています。現在は感染経路は性的接触によるものが60%以上を占めるとされています。成人において海外でB型肝炎に感染し、持続感染に移行する例が増加していることに注意が喚起されています。


