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内分泌

【内分泌疾患(甲状腺疾患・副腎疾患・下垂体疾患など)】

 

首が大きく見えて甲状腺腫大?、最近体がきつくてホルモンに異常がある?等、気にかかることがあれば一度血清ホルモン値を測定されることをお勧めします。

 甲状腺疾患 

 バセドウ病 

動悸(高齢者では心房細動)、体重減少、手の震え、イライラ感の様な症状がある方は、甲状腺ホルモンの測定をお勧めします。バセドウ病はTSH受容体抗体(TRAb、TSAb)が甲状腺を過剰に刺激し続けることにより、甲状腺が腫大し甲状腺ホルモン(FT3、FT4)が高くなり、 全身に甲状腺機能亢進症の症状が生じる病気です。バセドウ病は治療で治る病気ですが、未治療で放置した場合にインフルエンザ等に罹患したり、手術を受けたり交通事故に遭ったりしたら、甲状腺クリーゼと呼ばれる重篤な病態になることがあり、治療しないで放置することは決してしないでいただきたいと思います。バセドウ病の治療には、薬での治療、放射線での治療、手術があります。当院では薬での治療を行なっています。若い女性がバセドウ病を発症することも多く、妊娠中も内服薬で安全に治療を受けられておられます。バセドウ病の合併症に甲状腺眼症(バセドウ病眼症)があります。甲状腺眼症(バセドウ病眼症)はバセドウ病患者の25〜50%に見られ、眼球突出、上眼瞼後退、涙液分泌低下などが生じる病態です。臨床的に明らかに突出した眼症はバセドウ病患者の10%程度です(隈病院HP)。喫煙は甲状腺眼症(バセドウ病眼症)の増悪因子ですので、バセドウ病患者様には強く喫煙をお勧めします。バセドウ病以外で甲状腺ホルモンが高くなる病気として、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、機能性甲状腺結節があります。

 慢性甲状腺炎(橋本病) 

慢性甲状腺炎(橋本病)は患者様自身のリンパ球が自分の甲状腺組織を攻撃・破壊して甲状腺内に慢性の炎症を生じる病気です。多くの場合、甲状腺が腫大しますが、明らかな甲状腺機能低下症の症状のある方は約10%とされています。甲状腺機能が正常の場合には治療の必要はありませんが、甲状腺機能低下があれば甲状腺ホルモン(チラーヂンS)を補充します。冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞の既往のある)や心不全の患者様に甲状腺ホルモン剤を補充する際には、極少量より開始しゆっくり増量します。急速な補充は心筋梗塞を誘発したり心不全が悪化することもあり得ます。 海藻類を多く摂取するとヨウ素の摂り過ぎになり甲状腺機能が低下につながります。

テロイドホルモンの胎盤通過性

ステロイドホルモンは炎症を抑える薬理目的、および副腎皮質で産生できなくなった分を補充する目的で使用されます。プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン(メドロール)、 デキサメタゾン(デカドロン)、ベタメタゾン(リンデロン)は主に炎症を抑える薬理目的、コルチゾールは主に補充目的で使用されます。プレドニゾロンは胎盤にある酵素(11-βHSD)でほとんどが不活性化され、胎児への移行は10%とされています。これに対してメチルプレドニゾロンやベタメタゾンは11-βHSDによる不活性化を受けにくく、胎児への移行は30〜50%、デキサメタゾンは更に11-βHSDによる不活性化を受けにくく、胎児への移行は100%と考えられています。補充薬であるコルチゾールは11-βHSDで不活化されるので、妊娠中期移行は胎児には移行しないとされています。妊娠中にステロイドホルモンを使用する時は、胎盤でのステロイドホルモンの不活性化率を考慮する必要があります。

 【循環器疾患、高尿酸血症・痛風、その他疾患】  

 

坂道を歩いているときに胸が苦しくなり、息切れがする、動悸を感じる、寝ている時に胸が苦しくなり、息切れがする、動悸を感じる等の自覚症状がある方は心臓の精査をお勧めします。

 

 循環器疾患 

 狭心症 

狭心症は心臓の冠動脈の血行が低下し一時的に心臓に十分な酸素が供給できなくなり前胸部に痛みや息苦しさを生じる病態です。狭心症は心筋梗塞に移行しやすく、この段階できちんと対処する必要があります。道や階段を上っている時や運動している時に痛みが生じます。左胸の締め付けられるような痛み、息切れ、左肩や左首から左奥歯の痛みを訴えられる場合もあります。休むと少し楽になりますが、休んでも段々増悪したり痛みが持続する場合は心筋梗塞に移行した可能性があります。高齢の方や糖尿病がある患者様では、狭心症発作時や心筋梗塞発症時に胸痛の自覚がない場合もありますので、少しの体調変化の訴え等から狭心症を疑うことが必要な場合もあります。狭心症が起こっているときは特徴的な心電図波形が現れますが、狭心症が治まっているときは心電図波形は普段と変わりません。当院に来られたときは狭心症発作が治まった後のことが多く、丁寧に病歴を聞き狭心症かそれ以外の病気かの鑑別をします。病歴から狭心症が疑われた(否定できない)際には、熊本医療センター循環器内科や済生会熊本病院循環器内科等の直ぐに心臓カテーテル検査が可能な高次医療機関に紹介します。当院でも、毎年何人も高次医療機関に紹介し、治療して頂いています。

   安静時狭心症(冠攣縮性狭心症)   

深夜や早朝の安静時に狭心症に伴う胸痛発作を呈する狭心症の亜型があります。副交感神経が交感神経より優位になる時間帯で心臓の冠動脈が攣縮(収縮)することが原因とされています。高血圧の治療薬のアダラートC Rやヘルベッサー等のカルシウム拮抗薬で発作を予防でき、逆にβ遮断薬で発作が誘発されることもあります。

 慢性心房細動 

慢性心房細動では心房が不規則に小刻みに収縮する状態となります。そのような状況では心房によどみが生じ血栓形成につながります。心房内血栓が脳に飛ぶと脳梗塞が発症します。発作性および慢性心房細動の方は血栓形成予防のため抗凝固薬の内服が必要になります。カテーテルアブレーション治療にて心房細動を起きなくする可能性がありますので、カテーテルアブレーション治療をしている済生会熊本病院や大学病院に紹介しています。これまで何人もカテーテルアブレーション治療で治療して頂いています。心房細動が起きなくなれば、血栓形成予防のため抗凝固薬の内服の必要は無くなります。

 高尿酸血症・痛風 

 高尿酸血症・痛風 

高尿酸血症の患者数は年々増加し、現在高尿酸血症有病者数は1,000万人以上、痛風患者数は125万人以上と推計されています。高尿酸血症は痛風の原因となるだけでなく、腎機能低下(痛風腎)の原因および冠動脈病変のリスク因子にもなります。高尿酸血症は病態によって、①尿酸排泄低下型、②腎負荷型(尿酸産生過剰型+腎外排泄低下型)、③混合型(①+②)に分類されます。①が約60%、②が約10%、③が約30%とされ、約90%の患者様が腎臓からの尿酸排泄低下の特徴を持っていることになります。血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた場合に高尿酸血症と診断されます。

 高尿酸血症の薬物治療 

血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた場合に痛風がなければ(無症候性高尿酸血症)生活習慣の改善を指導します。無症候性高尿酸血症の患者様での血清尿酸値が8.0mg/dL以上で高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリック症候群等を合併していれば薬物治療を考慮し、それらを合併していなくても血清尿酸値が9.0mg/dL以上であれば薬物治療を開始します。痛風の患者様(既往歴も含めて)に対しては血清尿酸値が6.0mg/dL以下になるように治療します。尿酸排泄低下型であれば尿酸排泄促進薬を尿酸産生過剰型であれば尿酸生成抑制薬を考慮することは理にかなっていますが、尿酸生成抑制薬であるXOR阻害薬は慢性腎臓病(CKD)患者様における心血管合併症発症を有意に抑制したとの報告もあり、臓器保護も考慮して薬剤を選択しています。

 慢性腎臓病(CKD)患者様の高尿酸血症治療 

腎障害合併例では尿酸下降薬として原則として尿酸生成抑制薬を使用するとされています。推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分未満、あるいは血清クレアチニン 2.0mg/dL以上の腎機能低下患者様では尿酸排泄促進薬の効果が減弱することと、尿中への尿酸排泄が増加して尿路結石を増やしたり腎障害のリスクが高まる可能性があるとの理由からです。さらに尿酸生成抑制薬であるフェブリクは慢性腎臓病のeGFRの低下を抑制した、ウリアデックは尿中アルブミンの排泄を減少させたとの報告があります。しかし腎機能低下時の高尿酸血症の発生機序には尿酸排泄低下は確実に存在するので、最初に尿酸生成抑制薬で過剰酸性を抑えた後に尿酸排泄促進薬を少量追加することの有用性も発表されています。

 

 帯状疱疹 

神経の広がりに沿って小さい水疱の集簇が認められることがあります。典型的な場合は見ただけで帯状疱疹と診断できます。皮疹が小さかったり、発症して直ぐの場合にも、水痘・帯状疱疹ウイルス抗原検査キットを用いることで正確に診断することができます。当院では抗ウイルス薬(ファムビル・アメナリーフ)を処方しています。ファムビルは腎機能が低下した患者様では減量が必要で、アメナリーフは降圧薬アダラート等を内服中の患者様には注意が必要となります。患者様の状況に応じて薬剤を選択しています。顔面の三叉神経領域の帯状疱疹で目に病変が及ぶ可能性がある患者様は眼科に紹介し、並行して抗ウイルス眼軟膏の治療をして頂いています。顔面神経麻痺の原因として帯状疱疹が疑われる際には、抗ウイルス薬(ファムビル・アメナリーフ)を処方する場合もあります。

帯状疱疹
循環器
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