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GI写真
GI

グリセミック・インデックス(Glycemic index : GI)

 

低GI食品という言葉を目にされたことがあると思います。

同じ糖質量の食品を食べても血糖値の上昇の程度が大きく異なっています。GI:グリセミック・インデックス(Glycemic index)とは、食品ごとの血糖値上昇の程度を相対的に表す指標です。糖質50gを含む食品を摂取した際の血糖値の上昇の程度をブドウ糖50gを摂取した際の血糖との上昇の程度と比較します。

GIの説明図 2

GIが高い食品は摂食後に血糖値が上昇しやすく、GIが低い食品は摂食後の血糖値が上昇しにくい食品であると考えられます。GI値はその糖質の消化吸収のしやすさと、その糖質がブドウ糖以外の糖を含んでいるかいないかによって異なってきます。

                                       

GI ≧70              高GI食

56 ≦ GI ≦ 69     中GI食

GI ≦ 55             低GI食

                                      

 

 下にGIの一覧表を示します。血糖値が上がりやすい食品、上がりにくい食品の知識は糖尿病の食事療法の時に参考になります。さらに、詳細に見てみると色々のことに気付かされ結構面白いと思います。

GI一覧表
  1. 食品交換表の表1主食の中の食物で比較した場合、ご飯とパンはほぼ同じGI値で共に高GI食です。玄米が白米よりGIが低く中GI食になります。主食を麺にすると、うどんもスパゲッティ(麺それ自体での比較)は中〜低GI食に分類されます。この表には載っていませんが、そばのGIは、報告によって差異はありますが、うどんより若干低い値となっています。

  2. 砂糖(ショ糖)は甘いのでGI値が高いと思われていた方は、砂糖(ショ糖)のGI値 65は意外ではなかったでしょうか。砂糖(ショ糖)はブドウ糖と果糖が結合した二糖類です。血糖値は血中のブドウ糖濃度の値ですから、果糖が吸収されても直接的に血糖値を上昇させることはありませんが、一部は糖新生によりブドウ糖に変換されます。このため砂糖(ショ糖)のGI値はブドウ糖の半分近くになっています。 

  3. くだもののGI値もブドウ糖の約半分になっています。くだもの糖質にはブドウ糖・果糖・砂糖(ショ糖)があり、砂糖(ショ糖)のGI値と同じような理由でGI値が低くなっています。また食物繊維を含む分、GI値が低くなっていると考えられます。

  4. 果糖はブドウ糖より速やかにエネルギー源として代謝されます。過剰に摂取された果糖は肝臓で中性脂肪に変換され、高中性脂肪血症ときたし肥満につながります(資料リンク)。

低GI食の効能

低GI食に比べ高GI食は、1.4倍(1.23〜1.59倍)糖尿病になりやすく、1.26倍(1.13〜1.40倍)胆嚢疾患になり易いと報告されています。乳癌・大腸癌、胃癌等の悪性腫瘍では低GI食群、高GI群での有意差は示されませんでした。(資料リンク)

 

グリセミック・インデックス(Glycemic index)の注意点

  1. 食品のGIは絶対的な数値ではなく、同時に何を食べるか、前に何を食べたか、調理、よく噛んで食べるか等によって変化する点です。一例を挙げると、野菜(繊維成分)や脂質と一緒に糖質を摂るとGIは低下します。このことからも、主食(糖質)の前に野菜を食べることは血糖値上昇を抑える効果があることをご理解頂けると思います。

  2. GI値には発表者により多少の差異があります。今回は日本糖尿病学会の機関誌である「糖尿病」に掲載されたGIの一覧表を採用しました。他の文献・資料と異なった値があると思われますが、私自身で生データーは持っていませんので、差異についてのコメントは控えさせて頂きます。

  3. GIの基準糖質としてブドウ糖以外にも食パンやご飯が用いられることがあります。GI値の一覧表を見る時は基準糖質が何であるか把握しておく必要があります。

  4. GI値は一般のボランティアの方からのデーターですので、糖尿病患者様の値とは異なると思われます。

  5. GI値が低い食品でも過剰に摂れば血糖値は上昇し、肥満につながり、糖尿病を発症・増悪します。GI値の前に適正なカロリー摂取を心がけください。

  6. 低糖質食品と低GI食品が混同されていると思われる事象があると警鐘を鳴らされています。食事全体が低糖質食品に傾けば、エネルギー産生栄養素(3大栄養素)のアンバランスになり健康を損ねたり、かえって動脈硬化症を増悪させる危険性が指摘されています。(資料リンク)

ご飯vsパン

ご飯とパン、どちらが血糖値が上がる

 

当サイト掲載のグリセミック・インデックスを比較すると、ご飯 73に対してパン 75であり、他の資料でも若干パンの方がグリセミック・インデックスが高くなっています。グリセミック・インデックスだけで判断するとパンの方が血糖が上がりそうに思えます。ここに、おにぎり2個352kcalとレーズンフレッシュバターロール3個 354kkalを比較した報告があります(リンク1)。この報告ではご飯の方が血糖が上がっています。パンの方が相対的に脂質とたんぱく質が多く、炭水化物が少ないためと考察されていました。グリセミック・インデックスは血糖値の上がりやすさを教えてくれる非常に有効な指標に違いはありませんが、総エネルギーの中の炭水化物量も重要と言えます。

ご飯vsパン
カーボカウント

カーボカウント

 

グリセミック・インデックスの所で例に挙げた「ご飯とパン、どちらが血糖値が上がる」は、炭水化物(糖質)の量が血糖値上昇に重要であるということを分かりやすく示してくれています。これがカーボカウントの出発点です。文字通り、カーボ=炭水化物をカウントすることです。食品交換表による食事療法に、更に摂取糖質量を加えたのがカーボカウントの概念です。炭水化物摂取量-摂取繊維量=摂取糖質量で、これが血糖値の上昇に直結します。食品交換表では「単位」というスケールを導入しましたが、カーボカウントでは「カーボ」というスケールを導入しています。糖質10g を1 カーボと定義しています(糖質15gを1カーボと定義するやる方もありますが、日本では糖質10g を1 カーボとしている方が多いようです)。ちなみに低血糖の方にブドウ糖10gを摂っていただいた時、血糖は50mg/dL前後上昇します(インスリンの追加分泌がなければ)。

栄養素による血糖上昇のイメージ

主要な栄養素を摂取してから血糖値に反映されるまでの時間と程度を表しています。糖質 (炭水化物)は負荷後1時間前後にピークがあり2時間ではほぼ前値近くまで低下します。たんぱく質は摂取2.5〜5.0時間での血糖上昇を起こしますが、その程度は糖質 (炭水化物)に比較して大きくありません。脂質は摂取してから少なくとも7時間以上に渡って血糖上昇に寄与すると報告されていますが、血糖上昇の程度は更に小さいものとなています。このイメージ図からも糖質(炭水化物)が血糖上昇に最も大きな影響を与えていることが分かります。糖質の摂取量を把握し管理することが血糖コントロールに直結するとの考えから食事療法を行うのがカーボカウントと言えます。しかし、このイメージ図は糖尿病でない方のもので糖尿病の患者さんは糖質摂取後の血糖値のピークは2時間〜3時間まで遅延し、なかなか血糖値が摂取前の値まで低下しないパターンになります。

カーボカウントは1)基礎カーボカウントと2)応用カーボカウントに分けられます。

  1. 基礎カーボカウント:食事の内容を見る目をエネルギー(kcal)から糖質量(カーボ)にシフトさせ、食事の糖質量をできるだけ一定とし血糖コントロールを安定させる方法です。基礎カーボカウントを実践すると、各食事による糖質量のバラツキが少なくなり、毎食後の血糖値の上昇幅のバラツキを少なくすることができます。1型糖尿病患者さんがインスリン治療を行うためには基礎カーボカウントは必須です。2型糖尿病患者さんにとっても、食後高血糖の是正や予防、あるいは薬物療法に伴う低血糖の予防に役立ちます。糖質摂取量が食事によってまちまちな糖尿病患者さんには、基礎カーボカウントがおおすすめで、予期しない高血糖や低血糖の防止に役立ちます。

  2. 応用カーボカウント:1単位の追加インスリン((超)即効型インスリン)で処理できる糖質量(摂取糖質量、および血糖値)を知ることで、経口摂取量に合わせたの(超)即効型インスリン量を決定し、その時点での高血糖の是正に必要な(超)即効型インスリン量を決定する方法です。1型糖尿病や2型糖尿病で頻回注射やインスリンポンプ療法を行なっている患者さんにが対象となります。(糖質/インスリン比):1単位のインスリンで処理できる摂取等質量(g)、(インスリン効果値):追加の(超)即効型インスリンで血糖値がどれだけ下げられるか、を用います。具体的な算出の方法はここでは割愛しますが、インスリン1単位で処理できる糖質10g程度ですので (糖質/インスリン比)は[10g/単位]前後の値、(インスリン効果値)は[20〜100mg/dL/単位]の値となります。

 

基礎カーボカウントを行う上でよく食べる主食(ごはん、パン、めんなど)に含まれる糖質量を計算する簡便な方法を紹介します。ここでは各食事の副食に含まれる糖質量を一律20gとし、主食重量に目安の係数をかけて、その合計を食事の糖質量とします。

主食重量から糖質量の予測値

食品交換表を用いた食事療法で例としてあげた55歳男性にカーボカウントの一番簡易な考え方を当てはめてみましょう。

55歳男性、1日 1840 kcal、エネルギー栄養素の比率を炭水化物60%、たんぱく質 17%、脂質 23%

朝食の主食(表1)は4単位でしたので、ご飯を食べるとしたら200gとなり糖質は200×0.4=80gとなります。これに副食の糖質20gを加えて糖質は100gとなります。パンを食べるとすれば食パン120gとなり、糖質は120×0.5=60gとなります。これに副食の糖質20gを加えて糖質は80gとなります。主食にご飯を摂るかパンでを食べるかで、食品交換表で同じ単位数であっても糖質(炭水化物)量が異なってくることが分かります。1型糖尿病の患者様でも糖質(炭水化物)量の多い少ないで、血糖値が上下する場合には必須の知識・手段です。ここではカーボカウントの導入紹介に留め、本格的なカーボカウントによる食事療法は複雑になってきますので割愛します。

カーボカウントを用いるメリットと欠点

 

メリット

血糖上昇に直結する糖質摂取量を把握することにより、血糖コントロールが安定化しやすくなります。

インスリンを使用されている方は、インスリンの量に見合った糖質量を把握することができます。

 

欠点

糖質のみを重視すると、脂質やタンパク質摂取が過剰となり肥満や脂質異常症、動脈硬化を来しやすくなることがあります。

極端な糖質制限は血糖値の上昇は抑えられても、全身の動脈硬化が悪化するとの方向があります。

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