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グッドマン・ギルマン薬理学書→解熱鎮痛剤ついて



 グッドマン・ギルマン薬理学書14版を最近購入しました。この本には懐かしい記憶があります。大学3年の時、薬理第二の講義で助教授の荒木春夫先生(当時)がグッドマン・ギルマン薬理学書を原著で読むべきだと言われ、英語が大の不得意にもかかわらず、なぜか一念発起して購入した記憶があります。ほんの一部だけを眺めた結果になりましたが、学生時代を思い返すときに決まって思い起こす場面の一つになっています。今回、なぜか、そのグッドマン・ギルマン薬理学書を買ってみました。

 ここからが今回の本題です。新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに罹患した時に内服する解熱薬にアセトアミノフェン(カロナールⓇ)やロキソプロフェン(ロキソニンⓇ)等があります。カロナールⓇとロキソニンⓇの違いに関してです。ロキソニンⓇは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs : nonsteroidal anti-inflammatory drugs)に分類され、アスピリンⓇ、ブルフェンⓇ、ボルタレンⓇ、ポンタールⓇが同類の薬です。これに対してカロナールⓇはNSAIDsには分類されていません。NSAIDsは炎症の部位で重要な役割を果たすCOX-2という酵素を阻害することで抗炎症効果を発揮します。同時に胃、腎臓、心臓、血小板で働いているCOX-1を阻害し種々の副作用の原因ともなっています。カロナールⓇには、この炎症の組織でのCOX-2阻害作用、末梢の各臓器でのCOX-1阻害作用がほとんどありません。そのため抗炎症効果を発揮しない代わりに胃腸障害や腎機能障害等の副作用を起こしにくくなっています。一言で違いを言えば、カロナールⓇは解熱鎮痛薬でロキソニンⓇ等のNSAIDsは解熱鎮痛消炎薬ということになります。

 小児がインフルエンザの発熱に対してアスピリンⓇを内服した場合には、意識障害・肝障害をきたすライ症候群発症や、ボルタレンⓇ、ポンタールⓇを内服した場合にインフルエンザ脳症発症との関連性が指摘されています。カロナールⓇはそれらの発症の危険性が低いとされています。そのため日本では15歳以下、英米では19歳以下の若年者のインフルエンザの発熱に対してカロナールⓇが推奨されています。カロナールⓇはNSAIDsに比べ胃腸症状等の副作用が出にくいとされていますが、1日3,000〜4,000mgの内服は胃腸症状や血圧上昇に関連し、1回に10〜15g以上内服すると致死的な肝障害を生じ得るとされています(グッドマン・ギルマン薬理学書14版)。

 カロナールⓇとNSAIDsの解熱効果・鎮痛効果を比較した場合、NSAIDsに比べカロナールⓇの効果は穏やかと思われます。日本において通常使用されるカロナールⓇの容量(300〜500mg)は解熱効果は期待されますが、鎮痛効果には必ずしも十分とは言えないとされています。抜歯後の鎮痛効果での検討では、カロナールⓇ1回500mgはロキソニンⓇ(60mg) 1回1錠にやや劣り、カロナールⓇ1回1,000mgはロキソニンⓇ(60mg) 1回1錠の効果に匹敵するかそれ以上であると報告されていました。

 今回は、カロナールⓇとロキソニンⓇ等との違いに関してまとめてみました。ちなみに、このブログの原稿は主に日本語の教科書や資料を参考にして書きました。グッドマン・ギルマン薬理学書は、またほんの一部だけを眺めた結果になりました。



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